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祖母から聞いた話。
母方の実家は客商売をしていた。駅前の大きい通りをずっとまっすぐ、1kmくらいのところで、ガラス張りの店舗を持っていた。商工会議所のつながりで何かと出かけてしまう祖父の代わりに、昼間の店を守っているのは祖母だった。飲食店などとは違い、そうそう客の出入りの多い
店でもない。通りを行き交う人々を見て過ごす祖母は、毎週決まった曜日、決まった時間に店の前を駅方面へ通りすぎ、やはり同じ時間に反対方向へ帰っていく女性に気がついた。大都市のベッドタウンであったその町では、通勤、通学、もちろんそんな人間はいくらもいるのだが、なぜその女性が特に祖母の目
にとまったのかといえば、姿かたちが際立っていたからだった。祖母と同世代と思われるその女性は、顔はもちろん、姿勢も美しく、必ず決まった時間に、みっともなく慌てるなどということもなく、凛として、という言葉がこれほど似合う女性を初めて見た、と思うほど、まっすぐ歩いていた。
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