祖母から聞いた話。
母方の実家は客商売をしていた。駅前の大きい通りをずっとまっすぐ、1kmくらいのところで、ガラス張りの店舗を持っていた。商工会議所のつながりで何かと出かけてしまう祖父の代わりに、昼間の店を守っているのは祖母だった。飲食店などとは違い、そうそう客の出入りの多い
母方の実家は客商売をしていた。駅前の大きい通りをずっとまっすぐ、1kmくらいのところで、ガラス張りの店舗を持っていた。商工会議所のつながりで何かと出かけてしまう祖父の代わりに、昼間の店を守っているのは祖母だった。飲食店などとは違い、そうそう客の出入りの多い
店でもない。通りを行き交う人々を見て過ごす祖母は、毎週決まった曜日、決まった時間に店の前を駅方面へ通りすぎ、やはり同じ時間に反対方向へ帰っていく女性に気がついた。大都市のベッドタウンであったその町では、通勤、通学、もちろんそんな人間はいくらもいるのだが、なぜその女性が特に祖母の目
にとまったのかといえば、姿かたちが際立っていたからだった。祖母と同世代と思われるその女性は、顔はもちろん、姿勢も美しく、必ず決まった時間に、みっともなく慌てるなどということもなく、凛として、という言葉がこれほど似合う女性を初めて見た、と思うほど、まっすぐ歩いていた。
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服装も、いつもきちんと糊のきいたものを着ていて、仕立てもよく、高級なものだと思われた。化粧も、髪も、乱れていることがない。にこにこしている、というわけではないが、あるかなきかの微笑みを唇に佩いて、静かに歩いていく様は、掛け軸から抜け出してきた観音様のようにも思われた。祖母は、
その女性を心ひそかに「マダム」と呼んで、店の前を通りかかるのを眺めるのを楽しみにしていた。
真夏の、ある日のことだった。得意客からの長い電話を受けて、要領を得ない話をまとめて祖父宛に書き記し、ふと顔を上げると、目の前に「マダム」が立っていた。
真夏の、ある日のことだった。得意客からの長い電話を受けて、要領を得ない話をまとめて祖父宛に書き記し、ふと顔を上げると、目の前に「マダム」が立っていた。
「まあこれは、失礼いたしました。いらっしゃいませ。何か御用でしたでしょうか」
「ごきげんよう。〇〇はありますか」
急に壊れてしまったのだという。
「まあそれは、難儀だったことでしょう。もちろんございます。少々お時間がかかりますから、そちらにお座りになって」
見れば、「マダム」は
「ごきげんよう。〇〇はありますか」
急に壊れてしまったのだという。
「まあそれは、難儀だったことでしょう。もちろんございます。少々お時間がかかりますから、そちらにお座りになって」
見れば、「マダム」は
その穏やかな顔に滝のように汗をかいて、ぴしりとアイロンのかかった美しい刺繍の白いハンケチでそっと押さえている。普段は常連客にだってそんなことはしないのだが、祖母は住居へ取って返すと戸棚に出ている中では一番上等のコップに麦茶をなみなみと注いで、「マダム」に出した。
「お気遣い痛み入ります」
古ぼけたやかんで煮だした麦茶を召し上がる「マダム」は、洋酒を嗜む女優の様だった、という。
なにしろ古い商店街の、雑然とした店舗のこと、「マダム」ののぞみのものを出すには時間がかかった。愛想笑いを貼り付けた祖母の額を、頬を、汗の雫がぽたぽた落ちた。
古ぼけたやかんで煮だした麦茶を召し上がる「マダム」は、洋酒を嗜む女優の様だった、という。
なにしろ古い商店街の、雑然とした店舗のこと、「マダム」ののぞみのものを出すには時間がかかった。愛想笑いを貼り付けた祖母の額を、頬を、汗の雫がぽたぽた落ちた。
「お客様、もちろん〇〇はございますけれど、ご家族の方、どなたか迎えに来ていただくわけにはいきませんですか」
新しいものを出したとしても、この暑さである。少し時間もかかりそうだし、あとでご自宅へ配達に上がるのが一番良いという気がした。
新しいものを出したとしても、この暑さである。少し時間もかかりそうだし、あとでご自宅へ配達に上がるのが一番良いという気がした。
ふと、「マダム」が窓の外を見た。真っ白な、陽光が目を焼くような午後だった。それから再び祖母を見た。
「わたくし、家族はおりませんの」
暑いだけではない汗をたんと掻いて祖母が謝罪をすると、「マダム」は手と首を振って、謝る必要はないという意味のことを何度も言って、祖母をなだめた。
「わたくし、家族はおりませんの」
暑いだけではない汗をたんと掻いて祖母が謝罪をすると、「マダム」は手と首を振って、謝る必要はないという意味のことを何度も言って、祖母をなだめた。
その時、「マダム」の胸に何が去来したのかそれはわからない。けれども、同世代の女性であることに心がふと緩んだのか、なんなのか、麦茶のコップをテーブルに置くと、静かな様子で語りだした。
──わたくしの実家も、商売をしておりました。こどもの時分にはなかなかに羽振りがよく、両親も良い服を着て、米国の車を使っておりましたよ。そのような様子でしたから、目をつけられたのでしょうか、悪い金貸しからお金を借りて、わたくしが成人する頃にはもう、借金でどうにもならない様子でした。
金貸しは、極道の末の者でした。ある日実家に、映画でしか見たことのないような親分さんがやって来て、自分と結婚するのなら、借金はすべてなかったことにする、そうでなければこの場で全額払え、と言いました。他にどうする当てもなく、わたくしは親に売られました。
箱入りだったものですから、流される以外になんの手立ても思いつかず、見たこともないほど大きなお屋敷で、きれいな着物を着せられて、姐さん、姐さんと呼ばれていました。夫となった親分さんはもちろん、皆よくして下すったのですけれど、ついに親しみも感じることはありませんでした。申し訳のない
ことです。結婚して五年ほどでしたでしょうか、そのあいだ、里に帰ることは一度もなく、両親の消息も聞いたことはありません。夫はその頃とくに忙しそうで、屋敷の奥座敷にいるわたくしにでさえ、何だか恐ろしいことが起こるのではないか、と感じさせる日々でした。突然、わたくしに付いていた者に
屋敷のはずれの部屋の押し入れに、押し込むように閉じ込められました。いいかい姐さん、出てきちゃあいけない、絶対に出てきちゃあいけない、座布団をよくかぶって、と言ったその声を聞いたのはそれが最後です。その直後から、激しい怒鳴り合いの声と、足音と、何かを振り回す音と、そんなものが
響き渡りました。「出入り」でした。わたくしは本当に、ただただ、真っ暗な押し入れの中で、震えながら、泣きながら、口に座布団を咥えて、頭にも座布団をかぶって、じっとしていました。他にできることはありませんでした。何度も、わたくしのいる部屋に誰かが入ってきた足音がして、
これでもうわたくしも殺される、今度こそ殺される、と何度も思いましたけれど、ついに一度も押し入れのふすまは開かれませんでした。どのくらい時間がたったでしょうか。おそらく半日以上はたっていたのでしょうけれど、そのあいだ一度も、お水が飲みたいとか、御手洗に行きたいだとか、
思うこともありませんでした。ふすまを開けたのは夫でした。外は夜になっていて、大丈夫かと手を伸ばした夫をわたくしは泣きながら拒んだのです。もう耐えられない、離縁してくれ、できないなら殺してくれ、と泣きじゃくるわたくしに、夫は周囲の惨状を見回して、頷きました。
それから夫が語ったところによりますと、もともと両親の借金が、夫に仕組まれたものだったそうです。日舞の発表会でわたくしを見て、そうしたのだとか。泣き止まないわたくしを見て怒ることもせず、大金と一軒家とをわたくしに持たせて、すぐに離婚してくれたのです。
別れ際、両親の現在の住居も教えていただきましたけれど、売られた、という思いと、わたくしのせいで破産したのだ、という思いとがあって、訪ねていくことはできませんでした。幸い、日舞のほかにもお華やお茶や、お琴などにも覚えがありましたから、そういうものをひとさまに教えるなどして
生活することができました。両親とはその後も縁はなく、もとの夫を想っていたわけではないのですけれど、他の方と縁付く気持ちもとても持てずに、この歳までひとりで来てしまったのです。
「マダム」の話が終わる頃、祖母も〇〇を見つけ出すことができた。会計に取り出されたのは美しい蜥蜴革の長財布である。
「まあ、なんとも……映画のようなことで」
無礼かと思ったが、祖母にはそれ以外に言葉が出なかった。
「本当に。わたくしも、こうして語ると、映画の話をしているような気持が
「まあ、なんとも……映画のようなことで」
無礼かと思ったが、祖母にはそれ以外に言葉が出なかった。
「本当に。わたくしも、こうして語ると、映画の話をしているような気持が
いたします」
「マダム」は再び真っ白い陽光の下へ出て行った。
祖母の不躾な言葉にも気を悪くしなかったのか、それ以来、店の前を通るときにはガラス越しに会釈をしてくれたのだと祖母は語った。
「マダム」は再び真っ白い陽光の下へ出て行った。
祖母の不躾な言葉にも気を悪くしなかったのか、それ以来、店の前を通るときにはガラス越しに会釈をしてくれたのだと祖母は語った。
「本当に、美しい人には、わしゃたちの思いつきもせんような苦労があるよ。◇◇(母のことだ)もお前も、そこそこの顔で本当によかった。幸せになれる。ここ数年は姿を見ていないけれど、どうしているかねえ」
そう語った祖母が亡くなったのも、もう三年前の事である。
おわり。
おわり。
夏の暑い日の空気、古いものもの、畳や、狭く暗く埃っぽい空間。それらのにおいが感じられる人生の話。 twitter.com/iwo_yorunouo/s…
書き手の文才もあって、ちょっとしたSSだな twitter.com/iwo_yorunouo/s…
面白いー。世の中いろんな物語があるものだなぁ… twitter.com/iwo_yorunouo/s…
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Comment
14.
名前:
投稿日:September 07, 2018 22:21 ID:kysKZrZb0
Twitterなんだから、話が長くなるなら要点をまとめて簡潔に書けよ
13.
名前:
投稿日:September 07, 2018 02:28 ID:AwE5hbs40
米10
句読点が多くて読み辛い
句読点が多くて読み辛い
12.
名前:
投稿日:September 07, 2018 01:00 ID:q52WCIba0
無駄な部分が多くて肝心な部分の描写が弱い
11.
名前:
投稿日:September 07, 2018 00:15 ID:AwE5hbs40
スレの話は創作とは分かるけど、文章は美しい
情景先行の文章をオチが無いとかヤマが無いとか評する輩はラノベばかりを読んで純文学は読めないのでは?
情景先行の文章をオチが無いとかヤマが無いとか評する輩はラノベばかりを読んで純文学は読めないのでは?
10.
名前:
投稿日:September 07, 2018 00:01 ID:1n04J9Oi0
ああ、確かにこの文章は酷すぎる。
気持ち悪いほど塗りたくった老女の化粧のようだ。
書けば書くほど下手くそになる人というのが、この世にいる、という良い証左である。
気持ち悪いほど塗りたくった老女の化粧のようだ。
書けば書くほど下手くそになる人というのが、この世にいる、という良い証左である。
9.
名前:
投稿日:September 06, 2018 23:43 ID:KTko0Xyn0
長い
誰か産業で
誰か産業で
8.
名前:
投稿日:September 06, 2018 23:27 ID:n3zBHs4D0
文章力あると思って書いてんだろうなっていうくっさい文章
7.
名前:
投稿日:September 06, 2018 23:16 ID:df.nolm30
これひでーな
とかげ財布を伏せ字にして何が言いたいのか
とかげ財布を伏せ字にして何が言いたいのか
6.
名前:
投稿日:September 06, 2018 22:51 ID:XE0NyelE0
長いwww
話をまとめられない女かな?
ウザいよね。
話をまとめられない女かな?
ウザいよね。
5.
名前:
投稿日:September 06, 2018 22:46 ID:80MoN0Pm0
長いのツイッターでやる?
これを文才あるとか言っちゃうのって、どうかしてる
言い回し気持ち悪い
落ちがないなら、もっとサッパリ書いた方が
これを文才あるとか言っちゃうのって、どうかしてる
言い回し気持ち悪い
落ちがないなら、もっとサッパリ書いた方が
4.
名前:
投稿日:September 06, 2018 22:21 ID:7Kyz.2iS0
長い
3.
名前:
投稿日:September 06, 2018 21:46 ID:7hYmkhS90
ブログでやれよ
2.
名前:
投稿日:September 06, 2018 21:42 ID:aybNjw.90
ぶつ切れで読み辛い、山無し、オチ無し。
敢えて直接描写せずにボカしてるんだろうが全くの逆効果。
拗らせた中学生のような文章。
敢えて直接描写せずにボカしてるんだろうが全くの逆効果。
拗らせた中学生のような文章。
1.
名前:
投稿日:September 06, 2018 20:58 ID:mIaQLVyR0
大谷翔平はやはり真ん中しか打てない「ホームランは常に真ん中」
大谷は間違いなく真ん中しか打てないね。特にホームランはなぜか(というか、常に)真ん中しか打てていない。俺が知る限り、技術のある打者、強打者は、失投であっても、相手投手の失投であれば、それがインコースであってもアウトコースであってもホームランにできる。例をあげると 落合博満(日ハム) 大杉勝男(ヤクルト) 清原和博(オリックス) はそうだった。しかし、大谷はそれが全く無い。
【 最下位マリナーズ・マーリンズを解雇された、カサカサゴキブリ戦隊・スズキゴキロー Ameba 】←[ 検索 ]
大谷は間違いなく真ん中しか打てないね。特にホームランはなぜか(というか、常に)真ん中しか打てていない。俺が知る限り、技術のある打者、強打者は、失投であっても、相手投手の失投であれば、それがインコースであってもアウトコースであってもホームランにできる。例をあげると 落合博満(日ハム) 大杉勝男(ヤクルト) 清原和博(オリックス) はそうだった。しかし、大谷はそれが全く無い。
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財布を伏字にする意味はよく分からんな、確かに
トカゲ財布ってなんか特別な意味あんの?やくざもん御用達とか?